長崎物語

長崎物語 ― 坂と海と、四百年の窓

Garoop NovelCh.05
海の街であり、山の街でもある。長崎の地形は、平野を持たない。だから、家を建てるときは、坂の途中に石垣を積み、限られた土地を工夫して使ってきた。その工夫の連続が、いまの坂の町並みを作っている。階段で繋がれた集落、視線が抜ける斜面の窓、海と山を同時に見渡せる路地――。長崎で暮らすということは、毎日の上り下りを、生活のリズムに組み込むということだ。少し疲れる。でも、その分だけ、見える景色が変わる。それが、街の住人を、自然と忍耐強く、しかし柔軟にしてきた。坂の途中で振り返ったとき、ふいに目に入る海の青に、心がほどけていく――その感覚を知っている人は、もうこの街から離れられない。
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育てる・調教・産む