人物列伝

補助金の海図 ― 谷戸の町工場、三代目の挑戦

Garoop NovelCh.05
申請書を提出してから、採択結果を待つ三ヶ月間は、長かった。健一は、毎週、不安そうに小綾の事務所を訪れた。ある日、彼の妻から、小綾の携帯に電話が入った。「先生、夫が、夜眠れんって言うんです。落ちたら、どうしようって。先生、もしダメだった時、夫を支える言葉、いただけませんか」。小綾は、しばらく黙ってから、こう答えた。「奥様、結果がどうあっても、健一さんは、もう、変わってはるんです。事業を言語化した。スタッフと未来を語り合った。そのプロセスは、補助金より、ずっと価値があります」。電話の向こうで、ほっとする息が、確かに聞こえた。
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育てる・調教・産む