長崎物語

長崎物語 ― 坂と海と、四百年の窓

Garoop NovelCh.03
出島。たった一つの小さな扇形の埋立地が、二百年以上のあいだ、日本と世界をつなぐ唯一の窓だった。鎖国の時代、オランダ人と日本人がこの島で交易し、物だけでなく、医学、天文学、芸術、思想を交換し続けた。出島がなければ、日本の近代は、もっと遅れていただろう。長崎は、世界に開かれていることを、空気のように受け入れてきた街だ。だからこそ、街には今でも、洋館のあるグラバー園、教会の鐘の音、中国寺院の朱色、ポルトガル菓子の甘い香りが、不思議な調和の中に共存している。多様性を語るより前に、長崎はそれを生きてきた。歴史の教科書よりも、街の路地のほうが、ずっと多くを教えてくれる。
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育てる・調教・産む