人物列伝

聴くという仕事 ― オール社会保険労務士・須田朋美の十年

Garoop NovelCh.02
最初の電話は、五十人規模の製造業の社長からだった。「ベテラン社員が突然辞めると言い出した、どうしたらいい?」声には焦りが滲んでいる。朋美は静かに頷きながら、まず社員の話を直接聴く時間をもらえないか提案する。労務トラブルは、たいていの場合、給与や制度の問題ではなく、コミュニケーションの行き違いから生まれる。それは、十年以上この仕事を続けてきた彼女の経験から導き出された結論だった。「制度は、人を縛るためじゃない。守るためにあるんです」。その信念が、彼女の言葉の一つひとつに、確かな重みを与えていた。社長は受話器の向こうで、ゆっくりと深く息を吐いた。
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