人物列伝

聴くという仕事 ― オール社会保険労務士・須田朋美の十年

Garoop NovelCh.03
午後、彼女は中小企業の事務所を訪ねた。机を挟んで向かい合った社員は、長く沈黙していた。やがて、ぽつり、ぽつりと話し始める。残業時間が記録されないこと、有給休暇を取りにくい雰囲気、そして、家族との時間が削られていく不安。朋美はメモを取らず、ただ静かに頷いていた。話し終えた社員は、最後に小さな声で「聴いてくれてありがとう」と言った。その後、社長と社員、両方の声を踏まえ、就業規則の改定と勤怠管理システムの導入を提案する。半年後、その会社の離職率は半分以下になった。「制度は、現場で使われて、はじめて誰かを救うんです」――それが、彼女が何度もくり返してきた言葉だった。
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育てる・調教・産む