長崎物語

市電のリズム ― 坂の街を編む一本の糸

Garoop NovelCh.03
観光客と、地元住民が、同じ車内に共存する風景は、長崎の市電の、もうひとつの魅力だ。修学旅行の高校生たちが、声をひそめて笑い、横の席では、近所のおばあちゃんが、籐の買い物カゴを膝に乗せて、窓の外を眺めている。観光客は、Googleマップを片手に、慎重に降りる駅を数え、地元の人は、寝ぼけた顔でも、ちゃんと、自分の駅で目を覚ます。誰も、互いを邪魔することはない。市電は、すべての乗客を、平等に、目的地まで運ぶ。それは、長崎が四百年以上、外と内を受け入れてきた、寛容さの、象徴のようだった。
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