長崎物語

市電のリズム ― 坂の街を編む一本の糸

Garoop NovelCh.04
市電の歴史は、長崎の歴史そのものだった。戦前の繁栄、戦災の暗闇、そして、戦後の復興。一九四五年、原爆投下の翌朝、被爆した運転士たちが、瓦礫を掻き分け、わずかに残った車両を、再び、走らせた。「街の人が、街に戻れるように」――その想いが、市電を、走らせ続けた。レールが歪み、架線が切れ、駅舎が燃え落ちた中で、それでも、市電は、復興の最初の一歩を、街と共に、踏み出した。今、走っている市電の音は、その歴史の延長線上にある。だからこそ、長崎の人にとって、市電は、ただの交通機関ではない。
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