人物列伝

退職届の重み ― 夜の電話、組織を変えた半年

Garoop NovelCh.02
翌朝、朋美は会社を訪ね、被害を受けた女性社員と、別室で面談した。三十代後半、入社十二年目のベテラン。だが、目の下にはくっきりとクマが浮かび、声は囁くように小さい。「私が、おかしいんでしょうか」――その第一声に、朋美の心は痛んだ。ハラスメントを受けた人の多くが、最初に言うのは、加害者への怒りではなく、自分への疑いだ。朋美はメモを取らず、ただ静かに頷いた。「あなたは、おかしくないです。まず、それを、私から、はっきり言わせてください」。女性は、その一言で、堰を切ったように、泣き始めた。
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