人物列伝

退職届の重み ― 夜の電話、組織を変えた半年

Garoop NovelCh.01
深夜十一時、須田朋美の携帯が震えた。表示された名前は、ある中堅企業の人事担当者。普段、こんな時間に電話してくる相手ではない。「先生、明日でいいんですけど……いや、今日中に、相談だけ、聞いてもらえませんか」。受話器の向こうの声は、押し殺すように、震えていた。ハラスメントの相談――上司から部下への、長期にわたる言動。被害者は、もう限界のところにいる。朋美は、机のスタンドの灯りを消さず、メモを引き寄せた。「ゆっくり話してください。私は、ここにいますから」。労務の世界で、夜に鳴る電話は、たいてい、誰かの限界の音だった。
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