人物列伝

補助金の海図 ― 谷戸の町工場、三代目の挑戦

Garoop NovelCh.02
翌週、二人は工場の事務室で、申請書類の山と向き合った。事業計画書、設備投資計画、収支計画、市場分析、従業員のスキルマップ――。「補助金の申請って、こんなに、書くんですね」と健一は唸った。「補助金は、お金をもらうための作業じゃないんです」と小綾は言った。「自社の事業を、改めて言葉にする機会なんです。何が強みで、何を変えたいのか。それを、自分自身が一番、整理できる」。健一は、はっとしたような顔をした。彼にとって、工場は『当たり前にそこにあるもの』だった。それを、外に伝える言葉に、翻訳する作業。それは、思いのほか、深かった。
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育てる・調教・産む