長崎物語

卓袱の食卓 ― 丸い卓に、世界が集う

Garoop NovelCh.03
ハタオシ――卓袱料理の伝統を担う、特別な役割。それは、料理を運び、卓を整え、お客様の進行を、見守る人のことだ。英子は、五十年、この役割を続けてきた。「お客様が、何を欲しがってはるか、料理の前に、目で読むんです」。彼女の動きは、無駄がなく、しかし、温かい。料理の説明はせず、ただ、必要な時に、必要な料理を、卓の中央に、そっと置く。「説明しすぎると、お客様の対話が、止まってしまう。料理は、空気を作るもんで、主役じゃない」。それは、五十年の経験が、辿り着いた、料理人の哲学だった。
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育てる・調教・産む