人物列伝

老舗の春 ― 甘香堂、四代目への暖簾

Garoop NovelCh.04
小綾は、決算書を眺めながら、店の数字に込められた物語を読み解いていく。仕入れの和三盆の単価、売上のピークである二月と十一月、観光客と地元客の比率――。「老舗の数字には、季節と土地と人情が、刻まれているんです」と彼女は言った。誠は、IT企業で培ったスキルを使って、過去十年の売上データを再分析していた。新しい目線が、古い数字に光を当てる。「祖母の時代の良さを残しながら、僕にしかできない発信を加えたい」――そう語る誠の目は、PCの画面ではなく、店先の暖簾を見ていた。
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育てる・調教・産む