長崎物語

卓袱の食卓 ― 丸い卓に、世界が集う

Garoop NovelCh.06
現代の卓袱料理は、伝統を守りつつ、進化している。海外からの観光客に向けて、多言語のメニューを用意する店が増えた。英子の店でも、若い板前たちが、オリジナルの一品料理を、卓袱の流れの中に、組み込み始めた。「伝統は、止めることじゃなくて、続けることや」と英子は言う。「続けるためには、変えていい部分と、変えたらアカン部分を、見極めなアカン。それを見極めるのが、女将の仕事や」。新しい料理を取り入れた日、彼女は必ず、まず、自分の口で、味を確かめる。それは、五十年、変わらない、彼女の流儀だった。
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育てる・調教・産む