人物列伝

十一月の教室 ― 長崎商業高校、九十分の出前授業

Garoop NovelCh.07
帰り道、車の中で、山下は、ハンドルを握りながら、考えていた。「俺が、十六歳の頃に、誰かに、こう言われていたら、人生は、どう変わっていただろう」――。長崎の坂を、ゆっくりと上っていく車のラジオから、地元のニュースが、流れていた。彼は、ふと、自分自身に、こう言い聞かせた。「俺がやっているのは、未来の起業家を育てる、なんて、上から目線の話じゃない。十六歳の俺自身が、欲しかったものを、いま、子どもたちに渡しているだけだ」。出島の社務所が見えてきた頃、彼の中で、新しい事業のアイデアが、ひとつ、芽を出していた。鍛校の構想は、この日、少しだけ、形になりはじめていた。
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育てる・調教・産む