人物列伝

十一月の教室 ― 長崎商業高校、九十分の出前授業

Garoop NovelCh.05
質問タイムに入ると、最初に手を挙げたのは、後ろの席の女子生徒・優奈だった。彼女は、はっきりとした声で、こう問うた。「失敗したら、どうなりますか?」――その問いに、教室の空気が、一瞬、静かになった。山下は、笑った。本心からの、優しい笑顔だった。「失敗は、筋肉痛みたいなものです。痛いけど、その痛みが、ある日、強さに変わる。失敗しないで進む人より、失敗を抱えながら進む人のほうが、僕は、信用できる」。優奈は、メモを取った。彼女の目は、もう、戸惑いではなく、ずっと先を見ていた。教室の他の生徒たちも、それぞれに、何かを、自分の中で、書き留めていた。
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