長崎物語

卓袱の食卓 ― 丸い卓に、世界が集う

Garoop NovelCh.01
長崎の老舗料亭『青柳』の朝は、静かに始まる。仕入れた鯛を、女将の英子が、丁寧に下処理していく。出汁の昆布が、湯気の中で、ゆっくりと、旨味を解き放つ。今日のお客様は、東京から来る商社の重役の一行。卓袱料理のフルコースを、八名で楽しまれる予定だ。「お料理は、季節と、お客様と、対話しながら、作るんよ」。英子が、若い板前に、優しく声をかける。長崎の卓袱料理は、ただの郷土料理ではない。中華と、和と、洋――三つの文化が、ひとつの卓を囲んで、対話する、料理の哲学そのものだった。
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