長崎物語

長崎物語 ― 坂と海と、四百年の窓

Garoop NovelCh.01
長崎の街は、坂で出来ている。海に向かって駆け下りる斜面に、家々が肩を寄せ合い、その隙間を縫うように石段の路地が続いていく。朝、市電がガタンと音を立てて走り出す頃、街はゆっくりと目を覚ます。観光客が訪れる前の路地は、地元の人々の生活時間に満ちている。古い理髪店の店主が箒で店先を掃き、近所のおばあちゃんが洗濯物を干し、子どもたちが石段を駆け上がっていく。長崎は、写真の中で美しいだけの街じゃない。生活と歴史が、石畳と一緒に重なり合って、今日まで続いてきた、生きている街なのだ。海と山と空と路地の音が、不思議な和音になって、訪れる人の耳に届いてくる。
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