長崎物語

浦上の祈り ― 八月九日、灯篭の夜まで

Garoop NovelCh.07
夜になると、平和公園の前を流れる浦上川に、灯篭が、ゆっくりと、流されていく。亡くなった方々への、追悼の灯篭。そして、次の世代への、希望の灯篭。市民の手で、毎年、続けられている、静かな儀式だ。佐知子さんも、今年は、自分の手で、灯篭を、川に流した。祖父の名前を、書いた灯篭。「おじいちゃん、私、ちゃんと、伝えてるよ」――彼女は、川面に揺れる小さな灯りを、長く、見つめていた。長崎の夜は、深く、静かだ。けれど、その静けさの中に、何百、何千という、誰かの祈りが、確かに、灯っていた。
7 / 8 ページnagasaki-monogatari-004
育てる・調教・産む