人物列伝

鍛校の十歳 ― 颯太と『お母さんが帰ってくる夕方』

Garoop NovelCh.05
「颯太くん、はじめまして。息子に読んであげたら、泣きました。私もシングルマザーで、最近、息子と、すれ違うことが多くて。この絵本に救われました」――購入者からのメッセージが、Slack で、颯太に届いた。彼は、画面の前で、しばらく、動けなかった。お金よりも、その言葉が、彼の中の、何かを、確かに、変えた。「自分が作ったものが、誰かの心に、届く」。それは、十歳の彼にとって、初めての、本物の経験だった。母親が、夜、帰宅した時、颯太は、四百円を、母親の手に渡した。「これ、最初の売上。ありがとう」。母親は、握りしめた四百円を、しばらく、手放せなかった。
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