人物列伝

老舗の春 ― 甘香堂、四代目への暖簾

Garoop NovelCh.07
申告書類が完成した夜、家族は店の前に集まり、暖簾の下で写真を撮った。里子、誠、誠の父――三世代が並ぶ姿は、小綾のスマートフォンの画面に、永遠の一枚として収まった。「これで、ひと段落です」と小綾は言った。だが、彼女の中では、本当の仕事はここから始まることを知っていた。承継後の伴走、新規事業の数字、税制改正への対応――和菓子屋の四代目とともに、彼女もまた、新しい歩みを始める。鎌倉の路地に、月が高く昇っていた。誰かが店の灯りを消す前に、誠が暖簾を撫でた。「明日からも、よろしくな」と、そっとつぶやいて。
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育てる・調教・産む