長崎物語

市電のリズム ― 坂の街を編む一本の糸

Garoop NovelCh.07
夕方、市電の窓から見る坂の街は、絵画のように美しい。夕陽が、家々の窓に反射して、街全体が、淡いオレンジに染まる。市電の中の人たちは、それぞれに、その光景を、無言で眺めている。会話はなく、ただ、夕陽の沈むスピードに、人の心が、合わせられていく。一日が終わる、という感覚が、こんなに静かに、こんなに豊かに、訪れる場所は、そう、多くない。市電のガタンゴトンという音が、その静けさの中に、ちょうど良いリズムを、刻み続けている。長崎の人にとって、夕方の市電は、心の整理整頓の時間でもあった。
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