人物列伝

老舗の春 ― 甘香堂、四代目への暖簾

Garoop NovelCh.08
半年後、甘香堂の店先には、新作の上生菓子『海風』が並んでいた。由比ヶ浜の砂浜をイメージした、淡い水色と、白いあられの粒。誠が考案し、里子が手で仕上げた一品だ。SNSで話題になり、サブスクの申し込みが、開始一週間で予定数を超えた。けれど、店の暖簾は、変わらない。古い木の看板も、湯気の立つお茶も、里子の優しい笑顔も。新しいことを始めるとは、すべてを変えることじゃない。残すべきものを、はっきりと見極めることだ――小綾は、店を訪れるたびに、その真実を、再確認するのだった。鎌倉の春は、まだ続いている。
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